絵本ガイド徹底比較(雑誌・ムック編)

目次

はじめに

私は育児中の父親です。子どもに様々な絵本を読んであげたいと思いから「絵本ガイド」を手に取った結果、

  • 世の中には他にどんな絵本があるのだろうか
  • ほかの人はどんな理由で、どんな絵本が好きなのだろうか
  • このようなテーマ/この作家の絵本はどのようなものがあるのだろうか

といった好奇心が生まれ、今や10冊をこえる絵本ガイドを所有し愛読するまでになりました。今回は絵本探しのためだけでなく絵本の世界をより楽しむための絵本ガイドの紹介をしたいと思います。

紹介のポイント

絵本ガイドは、その成り立ちにより大きく二つの形式に分類されます。一つは一人の著者または単一グループによるオススメをまとめた形式です。もう一つは複数の執筆者や記者によるオススメをまとめた形式です。

そして前者は単行本(含む文庫本)形式で発行されていることが多く、後者は雑誌・ムック形式で発行されることが多いです。例えば前者「松井直のすすめる50の絵本」と後者「MOE 100万冊売れた絵本2020」など似て非なるものを並べて紹介しても、それぞれの特徴が分かりづらくなると考え、今回は「雑誌・ムック」の絵本ガイドに限定して紹介します。

紹介するのは次の6冊です。

  1. MOE 2017年7月号「大人からの絵本 オススメ300冊」
  2. 【完全保存版】読み継ぐべき絵本の名作200
  3. クリエイターおすすめの絵本650冊
  4. momo vol.18 古くて新しいストーリーの宝庫 絵本と昔話
  5. 全国100件の絵本屋さんによるベストセレクション!子どもと一緒に読みたい絵本
  6. 絵本town 読者のおすすめ絵本ガイド
そして紹介するポイントは概要・特徴説明に加えて次の2点とします。
  • インタビュー記事
  • (私がブログでも参考にしたい)面白い絵本紹介の切り口
というのも絵本はロングセラーが強いため、ガイドのコンセプトを強調したり、差別化を図ろうとしたりするためには取り上げる絵本の集合そのものではなく「誰が紹介しているのか(語っているのか)」および「どのように紹介しているのか(語られているのか)」という2点が重要であり、そこを比較することでガイドの「売り」が明瞭になると考えるためです。
  

では、はじめましょう!

絵本ガイド紹介

MOE 2017年7月号「大人からの絵本 オススメ300冊」

月間誌です。100万部以上売れている絵本のランキングが特集されています。記事の内容からデータ元はトーハンのミリオンぶっく(リンク先は2020年度版)と思われます。また国内人気作家の創作の原点となった絵本について、その作家による、その絵本にちなんだイラスト入りで紹介されています。

インタビュー記事としては女優の満島ひかりさんがお気に入り絵本をなど含め9冊紹介しています。「ままです すきです すてきです」といった個性的な絵本も紹介されています。

絵本紹介の面白い切り口としては「贈りたくなる絵本」という分類で絵本が紹介されています。絵本をプレゼントするのは「気に入ってもらえそう」&「かぶらない」をねらうのは難しいものですが、うまくいって喜んでもらえたらうれしいですよね。

【完全保存版】読み継ぐべき絵本の名作200

ほかの絵本ガイドでは大きく取り上げられない「ディックブルーナ」「トーベヤンソン」「ブルーノ・ムナーリ」の特集記事があるなど絵本のうち比較的「絵」・「デザイン」に軸を置いたガイドと感じました。

主なインタビュー記事は次の通りです。

参考にしたい絵本紹介の切り口として「おいしい絵本」と題して絵本の中にでてくる料理を実際につくった写真つきで紹介しています。

古くて新しいストーリーの宝庫 絵本と昔話

特徴として大きく「新刊書店、古書店、美術館、図書館、カフェなどの絵本と出会える場所の紹介とセットでの絵本紹介」と「昔話絵本紹介」という2大特集となっています。前者は「絵本と出会える場所」の「中の人」のオススメが紹介されています。後者は昔話について同じ物語の作品(作者・出版社)違いを紹介しており、その比較は大変面白いです。

昔話の学者である小澤俊夫さん、絵本作家のシゲタサヤカさんのインタビュー記事があり、また「絵本と出会える場所」特集自体がの「中の人」へのインタビューとなっています。

おもしろい切り口としてはやはり同一昔話の作品(作者・出版社)違い紹介です。ただこれは一朝一夕に語ることは難しい内容です。

クリエイターおすすめの絵本650冊

タイトルは「クリエイターにおすすめ」ではなく「クリエイターによるおすすめ」という意味でした。また「クリエイター」という表現は、ほぼ「絵本作家」と読み替えていただいてよいです。

つまり全編が絵本作家のインタビュー記事のような素晴らしい絵本ガイドです。選ばれている絵本もさすがで定番だけでなく、このガイドで知った絵本がたくさんありました。特集レベルでのインタビュー記事は

と盛りだくさんです。
面白い切り口としては多数のクリエイターからオススメとしてあがった作品をそれぞれのコメントともにピックアップして特集しています。ブログで行うとしたら複数ブロガーの同一作品へのコメントをまとめる感じでしょうか。

全国100件の絵本屋さんによるベストセレクション!子どもと一緒に読みたい絵本

さまざまなジャンルごとに書店員のおすすめが載っています。またおすすめされた数をベースにジャンルごとに1位から3位が掲載されています。例えば「赤ちゃん絵本」というジャンルに関する書店員おすすめと、そのランキングという形です。

インタビュー記事は川上未映子さん(作家)、つるの剛士さん(俳優)、KIKIさん(モデル)、ブラザートムさんの記事があります。

面白い切り口としては他のガイドと比較してもジャンルが20個と、かなり細分化されておりますので、ブログにおいても自分が紹介する際のグルーピングとして活用できそうです。

絵本town 読者のおすすめ絵本ガイド

このガイドは2007年発行と他のガイドと比較すると若干、昔のガイドです。他にない特徴は選者が絵本書店「クレヨンハウス」のお客様であるという点です。長年に渡って顧客から寄せられた便りを集めて絵本を紹介している重みのある一冊です。

インタビュー記事も豊富です。谷川俊太郎さん、瀬川康男さん、渡辺茂男さん、長新太さん、松岡達英さん、かこさとしさん、五味太郎さん、せなけいこさん、あべ弘士さん、中川李枝子さん、今森光彦さん、角野栄子さんと第一人者の方々が並びます。

面白い切り口としては365日のカレンダーが最後にあり、日付にちなんだ絵本が紹介されています。それは作家の誕生日であったり、「○○の日」であったり。これはブログでそのまま活用できそうです。またクレヨンハウスということもあり絵本関連グッズについてまとまって掲載されており記事として読みごたえがあります。

おわりに

いかがでしたでしょうか。定番志向の強い絵本業界ですが、このように各社が工夫を凝らしたガイドをみてみると絵本について個別の存在として認識していたものが新たな視点で関連づいたかたちで見えるようになったり、逆に似たようなものだと思っていたものに意外な違いを見出すことができたりと読み聞かせだけではない絵本の楽しみを発見できるのではないかと思います。

紹介した絵本ガイド

momo vol.18 絵本と昔話特集号

momo vol.18 絵本と昔話特集号

  • 発売日: 2018/12/06
  • メディア: ムック
 
クレヨンハウス絵本town 読者のおすすめ絵本ガイド