ぐぐーーっと ためてから解き放つ 絵本3冊
はじめに
私は育児の過程で絵本の読み聞かせが趣味となり、今や、その蔵書が1000冊をこえるまでに夢中になっています。様々な絵本に触れながら、絵本を読み聞かせしているなかで子どもの喜ぶ話に一定のパターンがあるのではないかと考えるようになりました。
それは「ぐぐーっとためてから解き放つ」話です。デコピンをするかのように、ためてためてーーっドーンとたまった力を解き放つようなストーリーで息子は歓声をあげて喜びます。一方、読み聞かせの手引きなど読むと「子どもがお話そのものに集中できるように過度な抑揚は避けましょう」といったことが書かれていたりします。しかし、この構造を含むお話は子どもの歓声を期待してしまい、ついつい読み聞かせる側も力が入ってしまいます。
今回はそんな親子ともに盛りあがる絵本を3冊ご紹介します。
絵本紹介
りんごがドスーン
この本はSF的なオープニングから始まります。
"おおきな、おおきなリンゴが〜(ページをゆっくりめくってじらしながら)〜(最後、ページを早くめくって)ドスーン"と大きなリンゴが落ちるてくるとこらから物語ははじまります。
通常「タメ」はクライマックスに配置されることが多いですが、この絵本は物語の最初にタメがくる珍しいパターンです。
息子も大変おきにいりで「もっかい」(もう一回読んでほしい)が繰り返された絵本です。ただ夢中になりすぎて風呂に入るときなど服を脱いだ後などに「ぼくのパンツが~ドスーン!」とドスーン遊びが続いてしまったりします。かわいくて楽しい絵本です。2歳ごろから楽しめますし、誕生祝にもおすすめです。
だいくとおにろく
鬼の名前を言い当てられれば、目玉をとられずに済むというお話で、物語の終盤に「おまえのなまえはXだ」「ちがう」という鬼の名前クイズを繰り返していくところが「タメ」です。「うんにゃ、ちがう」という鬼のニヤニヤした憎たらしいけど愛嬌のある表情がたまりません。登場人物の表情とスリリングな展開に子どもも絵本に入り込み、とても50年以上前に発行された大ロングセラーとは思えません。
読み手はタメつつ憎たらしい顔芸をしながら「ちがう、ちがう」と繰り返し、じらしてじらしてーーーー「ドーン」でお話はおしまいです。
またこのお話は「日本民話」として絵本化されておりましたが、その後の研究で純国産の話ではなく北欧神話を輸入した話だったという絵本好きには知られたおもしろい話があります。今回は割愛しますが以下に参考となるURLを掲載します。
おおきなかえる ティダリク
最後はオーストラリアの先住民に伝わる話です。こどものともからハードカバー化された作品です。
ムスッとしたカエルが表紙のためか当初、息子も「こわい、よまない」と拒否をしていました。しかし成長とともに読めるようになったら大ウケでした。
内容は大ガエルが平原の水を飲み干してしまって、ほかの動物が困って、あの手この手でカエルを笑わせて噴き出せて水を取り戻すというお話です。最終的には、とある動物のとある行動でカエルはついに笑ってしまい、水を噴き出すわけですが、そこをじーっくり、ためて、ためて読んでーーーーーーっ「ブシュー!!!」のところで子供も大爆笑です。このころはためすぎて、ページめくる前に子どもが先に噴き出してしまうなんてこともあるくらいです。
オーストラリアの昔話ということでカンガルー、コアラ、エミュー、エリマキトカゲ、ウォンバットなどご当地の動物が登場するあたりもおすすめです。それらのかわいい動物達が表情豊かにカエルを笑わせようとするのですから、読む側もほほえましく楽しめる作品です。4歳ごろから楽しめると思います。
残念ながら現在は書店では入手できないようで復刊するとよいなと思う作品の一つです。そのためペーパーバック版の中古本が比較的入手しやすいです。
おわりに
子どもが好むお話のパターンの一つとして「ぐぐーっとためてから解き放つ」という形式があるのではないかというという仮説と関連するおすすめ絵本を紹介しました。よく考えれば「サウナ後の水風呂」、「プログレの長い前奏の後のサビ」、「つらいプロジェクトの後の打ち上げ」などのように大人(例えが中年男性向けばかりですが)も大好きなパターンなのかもしれません。