登山の感覚が味わえる絵本3冊

山登りと育児

私は育児の過程で絵本の読み聞かせが趣味となりましたが、子どもが生まれるまでは趣味を聞かれると「登山」と答えていました。独身の頃のピーク時は年間40日は登山に行き、結婚後も頻度は減ったものの妻が休日仕事が多かったこともあり、テント一式を担いでは一人、あずさに乗ったものでした。
 
子どもが生まれてからというもの育児は「登山」のようだと感じています。
子どもは大自然と同様に、すべての人に対して平等に気まぐれであり、予想ができませんでした。しかし一歩一歩すすめば、ささやかな喜びもありました。それは例えるなら疲労困憊の中、足元に咲いている高山植物の小さな花であったり、暴風雨が去った後に振り返ったときの虹であったり。
 
というわけで登山からは足が遠のいている私ですが今回は山登りの楽しみや、そのときの感情が味わえる絵本を3冊紹介します。

絵本紹介

ポレポレやまのぼり

ポレポレやまのぼり

ポレポレやまのぼり

 

ストレートに登山を題材にした絵本です。EhonNaviの作者インタビューによるとご自身がキリマンジャロに行った際の経験が創作の原点となっているということです。そのため描写がとてもリアルです。

  • ペースがつかめず先を急ぐ初心者と山歩きはゆっくりが大事と諭すベテラン
  • ここをこえたら頂上かも!と思ったものの頂上ではないピーク
  • 無駄に持ち物が多い人
  • キャンプ地で出会った人たちと会話がはずむ
  • 星空の下の色とりどりのテント
など山歩きが好きな人なら納得のエピソードがたくさん。そのような登山の魅力を味わいながら爽やかな読後感が気持ちのよい作品です。
 

よあけ 

よあけ (世界傑作絵本シリーズ)

よあけ (世界傑作絵本シリーズ)

 

この絵本を読むと、風の音にビクッとするような静けさ、夜明けとともに無感情でテントを撤収し次のキャンプ地まで向かう心境、雪山を一人で歩きながら周囲には誰もいないのだろうなという妙な落ち着き…といった登山に熱中していたころの心情がよみがえってきます。


私が登山で最も感動的だと思っているのはヘッドライトをつけながら暗闇の中、出発し、尾根をあるいているときに少しずつ太陽の光で周囲の山脈や雲海が赤く染まってくる時間帯です。この絵本「よあけ」ではその時間帯が表現されています。

 

はしを わたって しらない まちへ

こどものとも 2017年10月号」です。舞台は山ではありません。休日に父親が息子を誘って、長い橋を渡って海を越えて先の島まで歩いていく話です。作品の中では触れられていませんが福音館書店の作品紹介によると瀬戸内海のしまなみ海道がモデルということです。

まず絵の色が美しい。空の色、海の色、緑の色だけでなくアスファルトの橋の色ですら透明感があります。

そして歩いているときの会話がいい感じなんです。「カモメだよ。どこかでカタクチイワシのむれでもみつけたかな」とそのときの景色の会話をしたり、歩き続けて疲れてきての「おとうさん。はしのむこうがわなかなかみえないね」「そりゃそうさ。うみはひろいんだもの」といったシンプルなやりとりなど山歩きと一緒です。

自分の足であるいて初めての場所にいく喜び、その疲労感と達成感、そしてさらなる好奇心という初めて山歩きに行った時の喜びが味わえます。

おわりに

登山の感覚が味わえる絵本ということで3冊ご紹介しました。山登りがテーマの絵本はもう少しあってもよいのかなと感じていますが、あまり出会えておりません。おすすめがございましたらご紹介ください。

今回ご紹介した絵本はいずれも絵が美しく、スケールが大きく、読み聞かせるだけでも日常から少し離れて、リラックスができる3冊です。