こどものとものススメ

こどものとも」とは福音館書店が出版している月刊の絵本雑誌です。幼稚園などで定期購読申し込みをするのが一般的な入手方法です。そのほか大きな書店ではバックナンバー含めて取り扱っているケースがあります。

 様々な種類の絵本を数多く読んであげたいという場合に、「こどものとも」は次の3つのメリットがあります。

  1. 低コスト
  2. 省スペース
  3. 好みと違う絵本と出会える

以下に3つのメリットを具体的に説明していきます。

低コスト

まずハードカバーと比較して低価格です。月額約300〜400円、年額にして約5000円程度で毎月、絵本が入手できます。ハードカバーであれば1冊1000円前後しますが、絵本の内容や読み聞かせるという行為においても差はありませんので様々な種類の絵本を数多く読んであげたいという場合におおきなメリットとなります。

 

一方、雑誌扱いになるので、将来、子どもの成長とともに絵本を手放したいときには従来は、古本屋などでは購入してもらえなかったり、二束三文にしかなりませんでした。しかし現在はメルカリ等フリマサイトが普及しており「こどものとも」はバックナンバー含めて根強い人気があり簡単に売ることができます。メルカリでの2020年10月時点の相場としては次の通りです。

  • 年度まとまり(4月~3月):1冊約200円(計2,400円)
  • 年度まとまりなしで複数冊販売:1冊150円
  • 1冊単品:300円 
※いずれも送料込み。記名なしを想定。
省スペース

次に限られたスペースに絵本を保管するにあたり、より多くの絵本の保管が可能となるという省スペース性です。以下、画像はハードカバー10冊とこどものとも10冊(年少版5冊、年中版5冊)の厚さの比較です。ハードカバーについても、こどものとも出身の作品(年少版5冊、年中or年長版5冊)をセレクトしています。(「ずかん・じどうしゃ」は背表紙がボロボロですね…)

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ハードカバーとの比較

 これは一目瞭然かと思います。

好みと違う絵本と出会える

最後に親子、双方の絵本の好みの幅を広げられるという点です。私はこのメリットが一番、大きいと考えています。私は数多くの絵本を読んであげたいと思い、ネット上入手できるおすすめ情報(「くもんのすいせん図書」等)、図書館でのおすすめリスト、そして市販されているガイド本などの情報を頼りに絵本を入手していきましたが、それに対してさらに親の好みフィルターがかかりますので300冊程度、入手し読み聞かせしてきたところで「読んであげたいな」という絵本のネタ切れになってきました。

 

その点、こどものともは「好みフィルター」がかかりませんので親子ともに作品単位で作家単位で予想外の出会いが得られます。こどものともきっかけでファンとなった作家は数多くおります。

 

また福音館書店「絵本の与え方」にあるように「よい絵本を選ぶ一つの目安として"成人式を終えた絵本"」というのが絵本選びでの一種の通説となっているなかで、現在の作家による新作を選んで購入するというのはなかなか勇気がいるものです。そのような絵本選びの特性がある中で、こどものともは絵本選びの幅を広げるよいきっかけになると考えています。

極端な料理の作り方がわかる絵本3冊

はじめに

子どもができてから料理をする機会が増えました。

 

とはいっても日曜大工ならぬ休日コックであり、効率やコストを考慮しない素人作業です。一番、作っているのはカレーを中心としたスパイス料理です。
 

ちなみに子どもがスパイスカレーを食べられるのか?という疑問があるかもしれませんが、食べられます。ただしレシピ上の「カイエンペッパー」を同量の「パプリカパウダー」に置き換えてつくっています。大人にとっては辛味がなくても、それ以外の材料の旨味と香りで十分に満足できるカレーとなります。

 

さて今回は料理や食べ物に関する絵本がたくさんあるなか「極端な料理の作り方がわかる本」を3冊紹介します。

絵本紹介

ホットケーキできあがり!

 「はらぺこあおむし」でおなじみエリック・カールの作品です。エリック・カールの数ある著作の中で私は「ホットケーキできあがり!」が一番、好きです。読み聞かせた感触からは、息子(食いしん坊)も同様と考えています。訳者はアーサー・ビナードさんで米国出身で外国語である日本語の訳をされている方です。

 

この絵本の何が「極端」なのかというと、「きょうは でっかい ホットケーキが たべたいなぁ」(息子)に対する「わたしは とても いそがしいの。てつだって くれないと できないわ」(母)という親子のやりとりからスタートし、息子が畑の小麦を刈り取るところからホットケーキづくりがはじまります。

 

いつになったらホットケーキができあがることやら…ということで、続きは本作品のなかでお楽しみください。私はホットケーキミックスでしかホットケーキを作ったことありませんが、おすすめのミックスは「cuoca北海道産ホットケーキミックス」です。甘さ控えめで牛乳も卵も使わないでもふんわり美味しく出来上がります。

ホットケーキできあがり!

ホットケーキできあがり!

 

  

アップルパイをつくりましょ りょこうも いっしょに しちゃいましょ

次はアップルパイです。材料入手が刈り入れ中の麦から始まるのは「ホットケーキできあがり!」と同様ですが…米国在住の少女が船にのってイタリアまで麦の収穫にいきます、その後はシナモンをスリランカへとりに行くなど、材料集めで世界中を旅してしまうというお話です。

 

作者はマージョリー・プライスマンという方で1958年米国生まれの女性です。訳者は「魔女の宅急便」で知られた角野栄子さんです。

 

残念ながら本作は2020年10月時点で一般書店では入手できないようです。私も古本で入手しました。復刊を希望します。

 

300年まえから伝わる とびきりおいしいデザート

最後は2016年発刊と比較的、若い作品です。
 
ブラックベリー・フールというデザートをつくり、味わうという話ですが、何が極端かというと、300年前から200年前、100年前、そして現代と4つの時代ごとの作り方が紹介されている点です。
 
社会背景、技術、道具など時代ごとに変わるものと、変わらないものを対比しながら、その両方をメッセージとして伝える構成となっています。
 
そのため子ども向けの絵本としては難しいテーマも含んでおりますが、その分、親子ともに楽しめる作品となっています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。麦を刈り取るところから始めるホットケーキ、世界中に材料を入手してつくるアップルパイ、4つの時代ごとの作り方のブラックベリーフールとなかなか面白い料理の作り方がわかる絵本3冊をご紹介しました。この中でも私はミックスではなく小麦粉のホットケーキにチャレンジしてみたいなと思っております。もちろん、粉から買ってきますが。

 

関連記事

  • 「ホットケーキできあがり!」の作者であるエリック・カールとその作品をご紹介しています。

誤記または誤植かと思ったら

絵本を読んでいて知ったことがあります。

 

"おきにいりの タイツに きかえて グリーンの スカーフを まきました。"『クネクネさんのいちにち きょうはマラカスのひ』(福音館書店)より

 "そこで、2かいにあがると、ひとりで ねまきに きかえて、ちいさいベッドに はいり、すぐに ぐっすり ねむってしまいました"『せきたんやのくまさん』(福音館書店)より 

 

最初これらの文章を読んだとき誤記または誤植かと思いました。「きかえて」という表現です。「きがえて」じゃないだろうかと。調べてみるとどちらも正しいそうですが「きかえる」の方が伝統的な読み方だそうです。もう少し調べてみると童謡「うれしいひなまつり」の歌詞も「きものをきかえておびしめて」でした。

 

日本語っておもしろいですね。というわけで取り上げた作品のうち一つをご紹介します。

せきたんやのくまさん

くまさんシリーズの一作目となります。ハードボイルドな文体が特徴です。感情を交えず、ひたすら客観的かつ具体的な事実の描写だけがつづきます。

 

このスタイル、私は読んでいて気持ちがよいです。文章として解釈の余地が少ないことができのよい技術文書を読んでいるかのような気分にさせるのでしょうか。

 

 この文体はレンスキー作のスモールさんシリーズが近いです。ただスモールさんシリーズは登場人物に比較的、表情があることや例えば「ちいさいじどうしゃ」であればパンクしてスペアタイヤに入れ替えたり、雨が降ってきてほろをつけたり、といったストーリーに起伏があるのですが、このくまさんシリーズは表情はなく淡々とひとりで職務をまっとうして1日が終わります。

 

という説明をすると退屈な絵本のように聞こえるかもしれません。しかし、その抑制の効いた絵と文章が、くまさんをメルヘンチックな存在ではなく、リアルな労働者・生活者として表現しており、そのことが独特の迫力を放ち、ほかにはない魅力となっています。

 

くまさんシリーズはほかに「パンや」「ゆうびんや」「うえきや」「ぼくじょう」があります。「せきたんや」が石井桃子さん訳、「パンや」「ゆうびんや」「うえきや」および「ぼくじょう」が間崎ルリ子さん訳となっております。

訳者は異なりますが、いずれも

①職業・持ち物紹介

②仕事+関連する擬音(せきたんやでは「どすん」)

③ささやかな感謝

④疲れて寝る

⑤締め

という型が様式美として確立しています。ちなみに「ぼくじょうのくまさん」だけが童話館でそれ以外が福音館書店となっています。経緯は調査しておりません。

 

先日、本屋に行くと「ボートやのくまさん」と「しょうぼうしのくまさん」が2020年の新刊として売り出されていました。小宮由さん訳となっております。

 

小宮由さん訳の2作は未読ですが、様式美は継承されているのでしょうか。気になります。こちらも、ぜひ読んでみたい2作です。

紹介した作品

 

きょうはマラカスのひ (日本傑作絵本シリーズ)

きょうはマラカスのひ (日本傑作絵本シリーズ)

  • 作者:樋勝 朋巳
  • 発売日: 2013/04/15
  • メディア: 単行本
 

1000冊の絵本に囲まれるまで

子供が生まれ、育児の中でも何か積極的に取り組める分野をつくれたらいいな、と軽い気持ちで絵本の読み聞かせを始めました。そして息子が4才の誕生日を迎えるころには自宅の絵本は1000冊を超えるまでになってしまいました。

 

何がここまで私を夢中にさせたのだろうと考えてみましたが、絵本の持つ世界観に対する好奇心や蒐集する楽しみもあるものの、何より、読み聞かせるという行為に私自身が何らかの心地よさを得ているのだと推測しています。

 

一方、読み聞かせについて妻に言わせると1日3冊が限界だとのことです。苦なくできる継続できることは強みであるとどこかで聞いたこともあり、私の持つ何かの性質とマッチしたのだろうとも推測しています。

 

そんな感じで、すっかり趣味の一つとなった絵本読み聞かせですが、同僚とのランチタイムの話題となることもなく、語る場がなかなかないため、ブログというかたちで絵本にまつわる話題を文章にしてみることとしました。

 

膝の上に子どもを乗せて絵本を読んであげられるのもほんの一時。期間限定の楽しみですので、その世界にどっぷりつかってみたいと思います。