ドングリ、クルミ 秋の終わりの木の実の絵本 3冊

はじめに

私は育児の過程で絵本の読み聞かせが趣味となり、今や、その蔵書が1000冊をこえるまでに夢中になっています。過去の記事の

でもご紹介したとおり私と息子の秋の遊びといえば「ドングリ拾い」です。しかし、この頃はすっかり涼しくなり、子どもと近所の公園にいっても、新鮮な(綺麗な)ドングリは拾えなくなってきました。そこで今回は去り行く秋を惜しんで木の実の絵本を3冊ご紹介します。

絵本紹介

ドングリ・ドングラ

2015年発行の比較的新しい作品です。内容はコナラ、カシ、クヌギ、シイ、松ぼっくりなど様々な木の実たちが集結し、とある共通の目的を持って列を組んで旅に出るというお話です。

この時点でお気づき思いますが、極めて独特の世界観の絵本です。まず木の実をキャラクター化する方法が独特です。この作品の木の実たちは下図の向かって左側のキャラクターのように2足歩行した人間の形状で約5~6等身の顔だけが木の実の姿です。また顔となっているドングリの向きも帽子の方が下となっております。

一方、ドングリ等が絵本でキャラクター化されて扱われるケースは多いですが、下図の向かって右側のように帽子側が上となっているパターンでまた木の実の本体から手足が生えているケースが多いです。

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ドングリのキャラクター化

そして、その独特の世界観の徹底がストーリー展開を盛り上げます。そのほんの一部をご紹介します。彼らドングリ達の天敵はリスです。ドングリの何倍の大きさもあるリスがピュアな瞳でドングリを食べようとします。絵本の歴史上、ここまで恐ろしいリスの描写はなかったのではないかと思います。絵本内の作者紹介文によると”「スターウォーズ」に感化され、SFやファンタジーのイラストを描き始める”とあり、SF好きということなので2009年から雑誌連載されている人気漫画「進撃の巨人」のオマージュである可能性は十分にあると考えております。

また絵本ナビの作者インタビューによると、とあるシーンは葛飾北斎のイメージも入れているということでしたので、もしかしたら私が気がつかないだけでその他にもオマージュ、パロディが含まれているのかもしれません。 

 

このような独特の世界観の中、さまざまな種類の木の実のキャラクターが隅々まで書き込まれた絵は見ているだけで楽しいですし、テンポよいストーリー展開で子どもも大好きな作品です。4歳ごろから楽しめると思います。

ドングリ・ドングラ

ドングリ・ドングラ

 

 

どんぐり

 次にご紹介するのは「かがくのとも」出身の絵本、その名も「どんぐり」です。「かがくのとも」とは福音館書店が発行している月間絵本雑誌です。「こどものとも」が物語を楽しむシリーズだとしたら、「かがくのとも」は科学や身の回りのことをストーリーとして楽しむというノンフィクションシリーズといえます。

 

まず表紙が美しいです。これは機会がございましたら書店で実物を手に取ってみていただけたらと思います。水色の空と黄色がかった木の葉っぱのコントラストは「北海道の翼」エアドゥの機体を彷彿とさせます。そうなんです。本作品は舞台が北海道で、ドングリはドングリでも「ミズナラ」がテーマになっています。絵本でドングリというとクヌギ、コナラがほとんどですから「ミズナラ」という時点で特別感があります。

 

ミズナラの木を中心にドングリの一生と森にすむ小動物の生態が描かれています。淡々と事実が書かれるスタイルですが、これがじんわりと温かみを感じさせる素敵な絵本です。4歳ぐらいから楽しめると思います。

どんぐり (かがくのとも傑作集 どきどき・しぜん)
 

 

くるみのなかには 

最後の木の実はクルミです。 2017年発行と比較的新しい絵本です。まず表紙がすばらしいです。小動物や苺、小さい花などを額にして中心に写実的なクルミが描かれています。そしてその上にタイトル「くるみのなかには」とあります。甘すぎず、シックすぎずで、これから始まる物語に期待を寄せることができます。

 

内容は「くるみのなかにはなにがある?」という問いに、繰り返し答えていきます。その流れで白黒、カラーという繰り返しも素敵です。そして物語の遠いところからだんだんと、自分たちの生きる世界へ展開していく流れなども素晴らしいです。

 

宝物のような絵本です。プレゼントにもおすすです。3歳くらいから楽しめます。 

くるみのなかには (講談社の創作絵本)

くるみのなかには (講談社の創作絵本)

 

 

おわりに

今回は木の実をテーマにそれぞれ異なる魅力の3冊の絵本をご紹介しました。しかし実は3冊は描き方は異なるもののテーマは共通だったりします。

そしてドングリ拾いもシーズンが終わり、次にドングリの木にお世話になるのは梅雨明け前後からのカブトムシ・クワガタ採集でしょうか。こうして植物の一年を見ていくと月日がたつのは本当にあっという間です。どんぐりの木のように子どもも日々、成長していくことを思うと、ますます毎日を大切に楽しんでいきたいと思った一日でした。

参考情報

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