ぐぐーーっと ためてから解き放つ 絵本3冊
はじめに
私は育児の過程で絵本の読み聞かせが趣味となり、今や、その蔵書が1000冊をこえるまでに夢中になっています。様々な絵本に触れながら、絵本を読み聞かせしているなかで子どもの喜ぶ話に一定のパターンがあるのではないかと考えるようになりました。
それは「ぐぐーっとためてから解き放つ」話です。デコピンをするかのように、ためてためてーーっドーンとたまった力を解き放つようなストーリーで息子は歓声をあげて喜びます。一方、読み聞かせの手引きなど読むと「子どもがお話そのものに集中できるように過度な抑揚は避けましょう」といったことが書かれていたりします。しかし、この構造を含むお話は子どもの歓声を期待してしまい、ついつい読み聞かせる側も力が入ってしまいます。
今回はそんな親子ともに盛りあがる絵本を3冊ご紹介します。
絵本紹介
りんごがドスーン
この本はSF的なオープニングから始まります。
"おおきな、おおきなリンゴが〜(ページをゆっくりめくってじらしながら)〜(最後、ページを早くめくって)ドスーン"と大きなリンゴが落ちるてくるとこらから物語ははじまります。
通常「タメ」はクライマックスに配置されることが多いですが、この絵本は物語の最初にタメがくる珍しいパターンです。
息子も大変おきにいりで「もっかい」(もう一回読んでほしい)が繰り返された絵本です。ただ夢中になりすぎて風呂に入るときなど服を脱いだ後などに「ぼくのパンツが~ドスーン!」とドスーン遊びが続いてしまったりします。かわいくて楽しい絵本です。2歳ごろから楽しめますし、誕生祝にもおすすめです。
だいくとおにろく
鬼の名前を言い当てられれば、目玉をとられずに済むというお話で、物語の終盤に「おまえのなまえはXだ」「ちがう」という鬼の名前クイズを繰り返していくところが「タメ」です。「うんにゃ、ちがう」という鬼のニヤニヤした憎たらしいけど愛嬌のある表情がたまりません。登場人物の表情とスリリングな展開に子どもも絵本に入り込み、とても50年以上前に発行された大ロングセラーとは思えません。
読み手はタメつつ憎たらしい顔芸をしながら「ちがう、ちがう」と繰り返し、じらしてじらしてーーーー「ドーン」でお話はおしまいです。
またこのお話は「日本民話」として絵本化されておりましたが、その後の研究で純国産の話ではなく北欧神話を輸入した話だったという絵本好きには知られたおもしろい話があります。今回は割愛しますが以下に参考となるURLを掲載します。
おおきなかえる ティダリク
最後はオーストラリアの先住民に伝わる話です。こどものともからハードカバー化された作品です。
ムスッとしたカエルが表紙のためか当初、息子も「こわい、よまない」と拒否をしていました。しかし成長とともに読めるようになったら大ウケでした。
内容は大ガエルが平原の水を飲み干してしまって、ほかの動物が困って、あの手この手でカエルを笑わせて噴き出せて水を取り戻すというお話です。最終的には、とある動物のとある行動でカエルはついに笑ってしまい、水を噴き出すわけですが、そこをじーっくり、ためて、ためて読んでーーーーーーっ「ブシュー!!!」のところで子供も大爆笑です。このころはためすぎて、ページめくる前に子どもが先に噴き出してしまうなんてこともあるくらいです。
オーストラリアの昔話ということでカンガルー、コアラ、エミュー、エリマキトカゲ、ウォンバットなどご当地の動物が登場するあたりもおすすめです。それらのかわいい動物達が表情豊かにカエルを笑わせようとするのですから、読む側もほほえましく楽しめる作品です。4歳ごろから楽しめると思います。
残念ながら現在は書店では入手できないようで復刊するとよいなと思う作品の一つです。そのためペーパーバック版の中古本が比較的入手しやすいです。
おわりに
子どもが好むお話のパターンの一つとして「ぐぐーっとためてから解き放つ」という形式があるのではないかというという仮説と関連するおすすめ絵本を紹介しました。よく考えれば「サウナ後の水風呂」、「プログレの長い前奏の後のサビ」、「つらいプロジェクトの後の打ち上げ」などのように大人(例えが中年男性向けばかりですが)も大好きなパターンなのかもしれません。
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ガロでデビューした絵本作家3名・3冊
はじめに
私は育児の過程で絵本の読み聞かせが趣味となり、今や、その蔵書が1000冊をこえるまでに夢中になっています。
今日は大発見です。はずれがない絵本の共通点に気が付いてしまいました。それは「ガロでデビューした絵本作家の絵本は、はずれがない!」です。
ガロとは漫画雑誌です。私は読んだことがありませんが「実験的、前衛的な漫画雑誌」という説明が一般的なようです。
ともかく私が好きな絵本作品の作家のことを調べていたら続けざまに「ガロでデビュー」と書いてあるのです。ただ残念ながら語れるほどガロのことを知らないため「ガロ」と「よい絵本」との関連性について論ずるのは次の課題とし、今回は作家とその作品を紹介します。
絵本紹介
おちゃのじかん(土橋とし子さん)
土橋とし子さんの作品です。土橋とし子 - Wikipediaによると「つちはしとしこ名義で、ガロで漫画家としてデビューし」とあります。絵柄は「ナニワ金融道」の青木雄二さんのようで個性的です。
親戚があつまって世界中のお茶とまつわる文化(作法や道具)を紹介していくという内容です。土橋とし子さんのほかの絵本作品と同様に登場人物は関西弁です。
お茶のうんちく絵本というよりはお茶を題材に親戚家族の楽しいひと時間が描かれていて、読むと笑えながら気持ちがなごむ素敵な絵本です。対象年齢は幅ひろく4歳から小学校低学年くらいまで楽しめると思います。
くものすおやぶんとりものちょう(秋山あゆ子さん)
秋山あゆ子さんの作品です。秋山亜由子 - Wikipediaによると「『月間漫画ガロ』 (青林堂)にて『一人娘』でデビュー」とあります。
この絵本は「こどものとも」からハードカバー化された作品です。虫のキャラクターが時代劇を繰り広げるお話です。
「ふてえやろうだぜい」「がってん しょうち」「これでいっけんらくちゃくだ」といった時代劇調のセリフが読んでいて気持ちがいいです。
ストーリー性も抜群でお話の終わりとともに、私の頭の中ではテーマ曲(インスト)が流れてスタッフロールが流れてという時代劇ドラマの終わり方が浮かびます。また絵の中で登場人物を探すなどの遊びの要素もあり「わいわい」楽しみながら読むこともできます。3歳くらいから楽しめます。傑作です。
へろへろおじさん(佐々木マキさん)
佐々木マキさんの作品です。佐々木マキ - Wikipediaによると「『ガロ』掲載の「よくあるはなし」で漫画家としてデビュー」とあります。やっぱり「ガロ」なんです。佐々木マキさんの作品はたくさんありますが、今回は「へろへろおじさん」を紹介します。
この作品も「こどものとも」出身でハードカバー化された作品です。内容は、おじさんが様々なトラブルに巻き込まれる悲劇です。大人ならありますよね「いやになっちゃう一日」そして、なぜか、そういうタイミングで「天使」が現れてギリギリのところで「まぁ、明日も頑張るか」と持ちこたえるときが。
その天使は「こどものおなら」だったり、同僚のメールの誤記「おつこれさまです」だったりします。そんなお話です。この「天使」という表現は中島らもの「その日の天使」から拝借しています。ご興味がありましたら「その日の天使」もご一読ください。こちらは絵本ではなくエッセイです。
おわりに
ガロでデビューした絵本作家3名による3冊の絵本を紹介しました。そのほかでは、たむらしげるさんも「ガロ」に漫画を掲載していたそうです(デビューは1976年に出た絵本「ありとすいか」であり「フープ博士の月への旅」はガロ 1978年5月号に掲載されており「ガロでデビュー」ではない)。ここで改めて「ガロ」執筆陣のお名前を見てみると漫画だけでなく多彩な分野でご活躍されている方のお名前が並んでいます。そのあたりによい絵本との関連性のヒントがあるのかもしれません。よい分析がございましたら情報いただけると嬉しいです。
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DJ父さんのおやすみ絵本3冊(贈り物にも)
はじめに
私が平日、絵本の読み聞かせをするのは子どもの就寝時が中心です。そして子どもにとっても寝る前の絵本タイムはすっかり習慣となり風呂上りには「絵本読んで~」となっています。
そこで私もレコードを選ぶDJ気分で、その日の気分の絵本を10冊程度ピックアップして読み聞かせをします。3冊ほどで寝ることもありますし、全部読み切ってしまい追加することもあります。一方、私がうつらうつらとなってしまい「お父さん、寝てた?」なんてパターンもあります。
最近の息子は眠気が高まってくると「声だけでいい」と言って寝っ転がって寝る体制になって絵をみず、お話を聞くだけのこともあり、そんなときはDJはDJでもラジオDJであり、さしずめ私は子どもにとっての深夜の馬鹿力だったり爆笑問題カーボーイといったところかな、なんて考えています。「さて、今日はスペシャルウィーク!エリック・カールづくしでお届けします」といった感じでしょうか。
さて今回は、そんな眠るまでのひと時を楽しむための「おやすみ絵本」をご紹介します。眠りをテーマにした絵本は世界中で描かれていますが、今回は国内作家による作品3冊をご紹介します。
絵本紹介
あくび
「はじめにかばがあくびをしたよ」から始まる本作は、あくびが次から次へとうつっていき、最後は「ぼく」にあくびがうつって~ねむねむ~おやすみなさいというお話です。大自然に暮らす「かば」から、どこからどのようにつながって「ぼく」まであくびが伝染していくのか…それは絵本の中でお楽しみください。
キングクリムゾンのアルバムのような表紙からもわかるようにインパクトのあるかわいらしい絵です。この絵本は我が家では出産祝いでいただいた本の一つで、その後、絵本好きとなった私ですが、今だにこの本が絵本ガイドなどで紹介されているのを見つけられず、当時、この絵本を贈っていただいた方は素晴らしい感性の持ち主だったのだなと感じています。2才くらいから楽しめます。
シルクハットぞくはよなかのいちじにやってくる
ホラーっぽいタイトルですが、そんなことはありません。シルクハットをかぶった紳士軍団が夜中の1時にやってきて…って何をするかは絵本でお楽しみください。絵もかわいく、ストーリーもあたたかみがあり、大好きな1冊です。3,4歳くらいがおすすめでしょうか。この絵本もプレゼントとしておすすめです。
しきぶとんさんかけぶとんさんまくらさん
真打ち登場です。「こどものとも 年少版」が単行本化された作品です。子どもの食いつきがすごく連続10回以上読みました。日本語表現が独特でリズミカルで歌詞のようでもあります。色合いも独特で、ここにこの色で、そこにこの色で、こう組み合わせるか!という感動があります。
寝るときは大人でも不安感があることがありますが、この絵本は大きな安心感を与えてくれます。実際の読み聞かせは2歳ごろからかと思いますが、出産祝いにもおすすめです。
おわりに
たくさんある 「おやすみ絵本」のうち今回は国内作家の作品をご紹介しました。どれもあたたかい作品です。また今回ご紹介した3冊は親の代から読み継がれてきたというようなロングセラー作品というわけはありませんので、プレゼントしても「かぶる」「すでにもっている」という可能性は低くなるのではと考えており、贈り物としてもおすすめです。
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ペイントどんぐりのススメ
1.はじめに
今年もどんぐりの季節となりました。子どもはどんぐりが大好きです。今回はどんぐりに絵を描いて、子どもが好きなキャラクターを作る遊びを紹介します。
我が家も今年はどんぐりを採集したばかりで絶賛、乾燥中ですが、 季節ものの話題ということもあり、いち早くお伝えしたいため、乾燥より後の手順は文章中心で説明させていただきます。また本文中の仕上がりイメージは昨年に作ったものを今回、改めて写真に撮っています。飾っているだけなら少なくとも1年は持つようです。
2.手順
2.1 採集
2.2 洗浄
2.3 分類
2.4 煮沸(虫除け)
茹でると若干のにおいが発生します。気になる方は専用の鍋を使ってもよいと思います。私も家族からのクレームを考慮し、古くなって使わなくなった登山用の鍋を使っています。
2.5 乾燥
2.6 デザイン(仕上がりイメージ)
ひろってきたどんぐりの大きさや形とともにどんな絵にするかを考えます。私が一年前に作った例を写真であげます。
2.7 ペイント加工
ペイントにはポスカを使います。ポスカの選び方および使い方は次の通りです。
下地は太字角芯
下地に使いたい色は太字角芯があると便利です。下地とはベースとなる色です。大トトロならグレーになりますし、バーバパパであればピンクになります。ペイント加工の初期工程は下地塗りからスタートしますが、これを中字でチマチマやっていられません。またキャラクターの絵を描かなくても下地だけや、下地に簡単な模様をつけてニス加工しただけでもかわいい一品になります。
こだわり派は下地重ね塗り
下地については「白」や「黄色」などの薄めの色の場合は何度か重ね塗り(塗って→乾いて→塗ってを繰り消す)をするとドングリの地の色(茶色)が見えにくくなります。
基本は中字丸芯
ポスカは重ね塗りができます。下地が乾いたら、その上に絵を描いていきます。そのときは中字丸芯が使いやすいです。ポスカは重ね塗りができますので多少のペイントの失敗はやり直せます。思い切ってやってみましょう。
金・銀は高級感がでる
私はダルマ(クヌギ)やクリスマスツリー(コナラ)を作るときに金色や銀色の中字丸芯を使いました。これだけでプレミアムどんぐり感がでます。
細字丸芯or極細は買うなら「黒」
細かい絵を描く場合は細字丸芯or極細です。なくても楽しめますが買うなら「黒」一本でよいです。
2.7 ニス加工
ペイント加工が終了したら(すべて乾いたら)、ニスを塗ります。ニスを塗らないとペイント(ポスカ)は、すぐ剥がれます。私が利用したのは以下の商品です。しかし、ほかの商品と使い比べたわけではありません。またペイント加工をしないでニスを塗るだけでもきれいなどんぐりになります。
また多くのクヌギは自立するのでニスが塗りやすいのですが、コナラ等細長いどんぐりについては自立しないため、ニスが塗りづらいです。そのため私は以下の発泡スチロールのような台座を用意して、爪楊枝をどんぐりの頭にさしてニスを塗りました。台座について私は世界堂で購入しましたが、なんでもよいと思います。
一方、ニス加工をした場合、飾っているだけなら大丈夫ですが、子どものおもちゃにすると半年後くらいでしょうか次第に剥がれが発生し細かいゴミがでます。それが気になる場合は上記手順の乾燥までは行ったうえでペイント加工もニス加工もしないでプレーンどんぐりで遊んじゃいましょう。子どもには十分、楽しいおもちゃになります。
3. おわりに
秋ならではのどんぐり遊びをご紹介しました。デザインについて「こんなのつくってみたよ」というようなアイデアがございましたらご紹介いただけますでしょうか。秋限定の遊びです。週末は、どんぐり拾いに行ってみてはいかがでしょうか。
4. 関連記事
登山の感覚が味わえる絵本3冊
山登りと育児
絵本紹介
ポレポレやまのぼり
ストレートに登山を題材にした絵本です。EhonNaviの作者インタビューによるとご自身がキリマンジャロに行った際の経験が創作の原点となっているということです。そのため描写がとてもリアルです。
- ペースがつかめず先を急ぐ初心者と山歩きはゆっくりが大事と諭すベテラン
- ここをこえたら頂上かも!と思ったものの頂上ではないピーク
- 無駄に持ち物が多い人
- キャンプ地で出会った人たちと会話がはずむ
- 星空の下の色とりどりのテント
よあけ
この絵本を読むと、風の音にビクッとするような静けさ、夜明けとともに無感情でテントを撤収し次のキャンプ地まで向かう心境、雪山を一人で歩きながら周囲には誰もいないのだろうなという妙な落ち着き…といった登山に熱中していたころの心情がよみがえってきます。
私が登山で最も感動的だと思っているのはヘッドライトをつけながら暗闇の中、出発し、尾根をあるいているときに少しずつ太陽の光で周囲の山脈や雲海が赤く染まってくる時間帯です。この絵本「よあけ」ではその時間帯が表現されています。
はしを わたって しらない まちへ
「こどものとも 2017年10月号」です。舞台は山ではありません。休日に父親が息子を誘って、長い橋を渡って海を越えて先の島まで歩いていく話です。作品の中では触れられていませんが福音館書店の作品紹介によると瀬戸内海のしまなみ海道がモデルということです。
まず絵の色が美しい。空の色、海の色、緑の色だけでなくアスファルトの橋の色ですら透明感があります。
そして歩いているときの会話がいい感じなんです。「カモメだよ。どこかでカタクチイワシのむれでもみつけたかな」とそのときの景色の会話をしたり、歩き続けて疲れてきての「おとうさん。はしのむこうがわなかなかみえないね」「そりゃそうさ。うみはひろいんだもの」といったシンプルなやりとりなど山歩きと一緒です。
自分の足であるいて初めての場所にいく喜び、その疲労感と達成感、そしてさらなる好奇心という初めて山歩きに行った時の喜びが味わえます。
おわりに
登山の感覚が味わえる絵本ということで3冊ご紹介しました。山登りがテーマの絵本はもう少しあってもよいのかなと感じていますが、あまり出会えておりません。おすすめがございましたらご紹介ください。
今回ご紹介した絵本はいずれも絵が美しく、スケールが大きく、読み聞かせるだけでも日常から少し離れて、リラックスができる3冊です。
絵本ガイド徹底比較(雑誌・ムック編)
目次
はじめに
私は育児中の父親です。子どもに様々な絵本を読んであげたいと思いから「絵本ガイド」を手に取った結果、
- 世の中には他にどんな絵本があるのだろうか
- ほかの人はどんな理由で、どんな絵本が好きなのだろうか
- このようなテーマ/この作家の絵本はどのようなものがあるのだろうか
といった好奇心が生まれ、今や10冊をこえる絵本ガイドを所有し愛読するまでになりました。今回は絵本探しのためだけでなく絵本の世界をより楽しむための絵本ガイドの紹介をしたいと思います。
紹介のポイント
絵本ガイドは、その成り立ちにより大きく二つの形式に分類されます。一つは一人の著者または単一グループによるオススメをまとめた形式です。もう一つは複数の執筆者や記者によるオススメをまとめた形式です。
そして前者は単行本(含む文庫本)形式で発行されていることが多く、後者は雑誌・ムック形式で発行されることが多いです。例えば前者「松井直のすすめる50の絵本」と後者「MOE 100万冊売れた絵本2020」など似て非なるものを並べて紹介しても、それぞれの特徴が分かりづらくなると考え、今回は「雑誌・ムック」の絵本ガイドに限定して紹介します。
紹介するのは次の6冊です。
- MOE 2017年7月号「大人からの絵本 オススメ300冊」
- 【完全保存版】読み継ぐべき絵本の名作200
- クリエイターおすすめの絵本650冊
- momo vol.18 古くて新しいストーリーの宝庫 絵本と昔話
- 全国100件の絵本屋さんによるベストセレクション!子どもと一緒に読みたい絵本
- 絵本town 読者のおすすめ絵本ガイド
- インタビュー記事
- (私がブログでも参考にしたい)面白い絵本紹介の切り口
では、はじめましょう!
絵本ガイド紹介
MOE 2017年7月号「大人からの絵本 オススメ300冊」
月間誌です。100万部以上売れている絵本のランキングが特集されています。記事の内容からデータ元はトーハンのミリオンぶっく(リンク先は2020年度版)と思われます。また国内人気作家の創作の原点となった絵本について、その作家による、その絵本にちなんだイラスト入りで紹介されています。
インタビュー記事としては女優の満島ひかりさんがお気に入り絵本をなど含め9冊紹介しています。「ままです すきです すてきです」といった個性的な絵本も紹介されています。
絵本紹介の面白い切り口としては「贈りたくなる絵本」という分類で絵本が紹介されています。絵本をプレゼントするのは「気に入ってもらえそう」&「かぶらない」をねらうのは難しいものですが、うまくいって喜んでもらえたらうれしいですよね。
【完全保存版】読み継ぐべき絵本の名作200
ほかの絵本ガイドでは大きく取り上げられない「ディックブルーナ」「トーベヤンソン」「ブルーノ・ムナーリ」の特集記事があるなど絵本のうち比較的「絵」・「デザイン」に軸を置いたガイドと感じました。
主なインタビュー記事は次の通りです。
参考にしたい絵本紹介の切り口として「おいしい絵本」と題して絵本の中にでてくる料理を実際につくった写真つきで紹介しています。
古くて新しいストーリーの宝庫 絵本と昔話
特徴として大きく「新刊書店、古書店、美術館、図書館、カフェなどの絵本と出会える場所の紹介とセットでの絵本紹介」と「昔話絵本紹介」という2大特集となっています。前者は「絵本と出会える場所」の「中の人」のオススメが紹介されています。後者は昔話について同じ物語の作品(作者・出版社)違いを紹介しており、その比較は大変面白いです。
昔話の学者である小澤俊夫さん、絵本作家のシゲタサヤカさんのインタビュー記事があり、また「絵本と出会える場所」特集自体がの「中の人」へのインタビューとなっています。
おもしろい切り口としてはやはり同一昔話の作品(作者・出版社)違い紹介です。ただこれは一朝一夕に語ることは難しい内容です。
クリエイターおすすめの絵本650冊
タイトルは「クリエイターにおすすめ」ではなく「クリエイターによるおすすめ」という意味でした。また「クリエイター」という表現は、ほぼ「絵本作家」と読み替えていただいてよいです。
つまり全編が絵本作家のインタビュー記事のような素晴らしい絵本ガイドです。選ばれている絵本もさすがで定番だけでなく、このガイドで知った絵本がたくさんありました。特集レベルでのインタビュー記事は
全国100件の絵本屋さんによるベストセレクション!子どもと一緒に読みたい絵本
さまざまなジャンルごとに書店員のおすすめが載っています。またおすすめされた数をベースにジャンルごとに1位から3位が掲載されています。例えば「赤ちゃん絵本」というジャンルに関する書店員おすすめと、そのランキングという形です。
インタビュー記事は川上未映子さん(作家)、つるの剛士さん(俳優)、KIKIさん(モデル)、ブラザートムさんの記事があります。
面白い切り口としては他のガイドと比較してもジャンルが20個と、かなり細分化されておりますので、ブログにおいても自分が紹介する際のグルーピングとして活用できそうです。
絵本town 読者のおすすめ絵本ガイド
このガイドは2007年発行と他のガイドと比較すると若干、昔のガイドです。他にない特徴は選者が絵本書店「クレヨンハウス」のお客様であるという点です。長年に渡って顧客から寄せられた便りを集めて絵本を紹介している重みのある一冊です。
インタビュー記事も豊富です。谷川俊太郎さん、瀬川康男さん、渡辺茂男さん、長新太さん、松岡達英さん、かこさとしさん、五味太郎さん、せなけいこさん、あべ弘士さん、中川李枝子さん、今森光彦さん、角野栄子さんと第一人者の方々が並びます。
面白い切り口としては365日のカレンダーが最後にあり、日付にちなんだ絵本が紹介されています。それは作家の誕生日であったり、「○○の日」であったり。これはブログでそのまま活用できそうです。またクレヨンハウスということもあり絵本関連グッズについてまとまって掲載されており記事として読みごたえがあります。
おわりに
いかがでしたでしょうか。定番志向の強い絵本業界ですが、このように各社が工夫を凝らしたガイドをみてみると絵本について個別の存在として認識していたものが新たな視点で関連づいたかたちで見えるようになったり、逆に似たようなものだと思っていたものに意外な違いを見出すことができたりと読み聞かせだけではない絵本の楽しみを発見できるのではないかと思います。
紹介した絵本ガイド
父親がでてくる絵本3冊
私は育児中の父親です。育児の過程で絵本の読み聞かせが趣味となり、今や、その蔵書が1000冊をこえるまでに夢中になっています。
今回は父親がテーマの絵本を紹介します。父子関係の描き方はいろいろと考えられますが、絵本においては、さりげない父子関係が表現されているものが私の好みです。
そのような絵本を3冊、紹介します。
きんようびはいつも
毎週金曜日、父と息子で出勤前にカフェで朝食を共にするという話です。
カフェまでの道のり、そしてカフェの中を通して、さりげなく家の外の世界つまりルール・仕事・人間関係といった社会を子どもに伝えるという感じが好きです。装丁も凝ってます。背表紙はネイビーのウィンドウ・ペン柄となっており、表紙に父親が身に着けているスーツの柄となっています。父親の背中ということでしょうか。
おとうさんやま
「こどものとも年中向き 2019年6月号」です。寝ているお父さんを「山」として小さくなった姉弟が山登りをします。休日と思われる父親はただ寝っ転がっているだけで最後まで一言も発言はありません。
それでも父親の役割と愛情がつたわる楽しい絵本です。単行本化希望です。
もりのなか
定番中の定番ですので内容の紹介は割愛します。「森」は子どもにとって居心地のよすぎる場所であったり、居心地のよくない場所であったりするでしょう。そのときに、この絵本にでてくる父親のように「ああ、そうか」と肩車に乗せて、ときには森から帰る場所となり、ときには森から出発するためのきっかけとなりたいと考えております。
紹介した作品